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ブラックアウト寸前

増え続ける細胞の音を聞いた気がしてあまりの生命力に思わず息を止めてみた

2017'10.18.Wed
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2007'04.20.Fri
それまで何かの仮面をかぶっていて、何かのはずみでカタンと音をたてて落ちた、その瞬間をみてしまった。

明るくてよく笑っていてそれでも周りによく気が付くのが千石清純という男だとそれまで思っていた。本当のところはまったくそういったわけではなかったが、すくなくともそれまではそれ以外の面を見せない男だったのだ。
すきだよ、と言ったその日だって彼はその仮面を外さなかったし、それから今日まですこしの油断もなく仮面をかぶりつづけていた。あんまり精巧にできた仮面っていうものは上手すぎてもう自分の顔なのか偽物なのかの区別だってつかない。それは本人ですら、多分。

最後の一球が本当にまるで映画みたいにスローモーションでネットへと吸い込まれていく。テニスボールが地面に落ちた瞬間に、そのはずみで彼の仮面も一緒に落ちてしまったようだった。
あれだけ肌にぴったりとはりついていた仮面は造作もなく転がり落ちて、まるでなかったかのようだったから千石自身きっとまだその仮面がはずれたことにだって気付いていないはずだ。
あんなに表情のゆたかだとおもっていた千石の無表情というのはおそろしさやそういったものよりも凄惨で、嵐のようにざっと音を立てて俺の心をとおりすぎていった。
彼のその瞬間をみてしまったのはどうやら俺だけらしく、みな試合に負けてしまったことで肩を落としていた。
俺だっていままでの3年間がこの瞬間おわってしまったということは頭のどこか冷静な部分がしっかりとその答えをだしていたが、同時に、今見てしまった説明のつかない現象については混乱するばかりだった。

実際は千石は数瞬の間だけ自失していただけですぐにまたもとの仮面を被りなおしてへにゃりと笑って壇にごめんねえとあやまりながら泣いている室町を宥めるといつもどおりの彼に戻ってしまっている。それをみてまた俺は混乱する。
彼がこちらに気付く。
「ごめんねえ南、せっかく南たちが繋いでくれたのに俺で駄目にしちゃって」
混乱している俺が何について混乱しているのかまだ彼は気付いていない。


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