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ブラックアウト寸前

増え続ける細胞の音を聞いた気がしてあまりの生命力に思わず息を止めてみた

2017'10.18.Wed
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2007'07.04.Wed
金曜日の夜に、乗車券を2枚と小さな鞄ひとつで侑士はやってきた。今からちょっと出られるか、と聞かれ、俺はすぐにそれはいつものようにただしゃべるために近くの児童公園に誘う其れとは違うことにすぐに気づいてしまったので、ちょっと待って、とだけ言い置いて部屋へ戻り、部屋着からお気に入りの服に着替えて、簡単に身支度すると机の財布と携帯電話へ手を伸ばしたが、携帯電話はおいていくことにした。多分此れは必要ない。
慈郎に返信しそこねてしまっていて、ごめん、と携帯電話に向かってあやまって(意味がないことぐらいわかってはいるがかといってここでそのままにしておけるほど俺は嫌な奴じゃない)
玄関へと急いだ。
スニーカーもこの間の休みに買ったばかりの濃いピンクのハイカットをはいて行くことにした。侑士はその間中黙っていて、俺はそんな侑士の分もよくしゃべった。
母親にちょっと出てくる、とだけ言いおいて俺と侑士は家を出た。少し歩いて一度だけ家を振り返る。
「がくと、ええのん」
「いいよ」
侑士が俺の少し前で立ち止まる。ここで引き返したらどうなるか俺は考えて、それから侑士の手をとり、さっきまでの慈朗とのやりとりをおもしろおかしく話して聞かせた。

おどろくほど、侑士の手のひらはつめたかった。



週末の上野駅は混雑していて誰も俺たちに気がつかないみたいだった。
誰にも見えない俺たちは人と人との間をすり抜ける。俺にとっての道標は頭上の看板でもなくただ、つないだ侑士の冷たい手だけだった。いくつかの階段を上り下りして俺は感覚がおかしくなってきた、ここは地上か地下か。


侑士の持っていた乗車券は北斗星のもので、ベタだな、と俺は笑った。恋愛映画が好きな侑士のいかにもすぎる選択に俺はまた笑った。
  



かけおちの話
 
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