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ブラックアウト寸前

増え続ける細胞の音を聞いた気がしてあまりの生命力に思わず息を止めてみた

2017'05.23.Tue
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2007'12.11.Tue

ぶつん、と張り詰めた糸の束に断ち切り鋏を入れたような音が耳の後ろのあたりから聞こえたかと思うと目の前が真っ暗になる。
ああ、あいつが来る。
俺はもう少しだけでいいから冷静さを失わずに居たいとうずくまった身体の下敷きになった手に触れている砂をぎりぎりと握り締めた。あいつに明け渡してしまうのだけは嫌だ。
耳の奥で声がする。早く、どけよ。



嫌だ。嫌だ。こっちに来るなよ。そこは俺の。俺の。

嫌だ。


嫌だ。





嫌だ。

 






carmineの景色






気がつけばやっぱり俺はあいつに追いやられて、暗い部屋にいた。真っ暗な部屋にはソファがひとつとテレビがひとつ。テレビは何故かとても古くて、ダイヤルをひとつひとつ廻すキャラメルを少し焦がしたような色をしている。暗くてあまり様子はわからないけれど。テレビは砂嵐でざあざあと嫌な音ばかりする。部屋は狭いのか広いのかわからない。一度壁まで歩いてみようと思ったこともあったがどこまでが壁でどこからが闇なのか際限なく続いていたらこの場所に戻ってこれないんじゃないかと恐ろしくなってやめた。この部屋にきたら俺は何もできない。
ただソファに座ってテレビの画面を見つめる。俺があそこにいない間あいつが何をしているのか見張ってなければならないんだ。
畜生。そう呟きながら親指のつめを噛んだ。あいつも同じ癖があるから俺のつめはいつもぼろぼろだ。
砂嵐はいつのまにか鮮やかなカーマインに染まる。
カーマインの向こうにあいつが見ている世界が広がる。あいつの世界は気味が悪い。いっそ鮮やかで奇麗だと思えるほどの色彩のなかに黒く塗りつぶされた針金の塊のような人。建物だとかそういった他のものはまるで作り物のように輪郭だけが映るだけでちっとも何かわかりやしない。
壊れた万年筆で強引に描いたみたいな人はしゃべる。声を聞けばそれが誰なのかわかるがその声はひどく曖昧でほとんど聞き取れない。
あいつの見ている世界は異常だ。まるで異常。ただただ赤く、見つめていると気が狂うんじゃないかと思う。
あいつがいることに気づいたのは最近で、それに気がついたのは柳先輩だけだった。他の先輩はただ俺がいつもよりもっと凶暴になったと思い込んでる。あいつは人の言うことなんて少しも聞かない(それが幸村部長であってもだ!)けれど何故か柳先輩のことは少しだけ、聞く。柳先輩はあいつは俺である部分も少しあるらしいのでもしかすると俺が好きだと思ってるのと同じなのかもしれないといった。俺はあいつであるはずもないのだけど。あいつの見る景色の中で柳先輩だけはうっすらと輪郭をもっている。ぼんやりとしてそれはカーマインに滲んでいるがそれが誰なのかはわかる。
俺はあいつのことを憎んでいるといっていいくらい嫌いなのに柳先輩はそうでもないという。少し聞かん坊な所はあるがまあ可愛いものじゃないかとすらいう。俺には少しもそうは思えないのだけど。
テレビの画面は相変わらずカーマインの景色で気味が悪い。
はやくあいつの気が済んで俺を戻してくれればいい。ひとりきりでここにいるといつかここから出られなくなるんじゃないかとだんだんと恐ろしくなる。いつかあいつが俺をのっとって俺はずっとここに一人きりになるんじゃないか。
画面にうつる人のような黒い塊がぐちゃりとつぶれた。すごく嫌な音がする。何かが飛んできてカーマインはさらに鮮やかさを増した。俺は急に胃の奥を握りつぶされたみたいになって、こらえきれずに吐いた。
俺はこの色を知ってる。
吐いて吐いて、あとはただ嗚咽した。

やめてれくれよ。もう。俺が俺でなくなる。早く何処かにいけよ。
俺が俺でいられるうちに、俺の居場所がなくならないうちに。
俺が俺?俺がここにいる限りもうあそこにいる俺は俺じゃないのか。じゃあ俺はどこに行けばいい。俺は?
俺は何処に?
俺はもうここから出られないの?
やめろよ。何故で出てくるんだよ。早く何処かにいけよ。俺は。俺の。俺が。


テレビがから目を逸らしたいのに俺はただ金縛りにあったみたいになってしまって指ひとつ動かすことができない。ただソファでうずくまるようにして足を抱えたまま木偶みたいにテレビを見続ける。瞳が乾く。このまま虹彩までカーマインに染まるんじゃないかというほどただ凝視する。汗が背中を伝って気持ちが悪い。ああ。
あの色は嫌な色。
早く。早く。お願いだから。ああ。












ぱちん、と暗い部屋に灯りがつく。何処に扉があったのかわからないがようやく動くようになったが随分と油をさしていない機械がぎぎ、と音を立てるように鈍く首を回してそちらを見ると、そこには輪郭が真っ黒な人影がいた。テレビの残像のせいかカーマインがまだちらついて。俺は瞬きを繰り返した。
人影がこちらに近づいてくる。
俺はすっかり虚脱してしまっていて、それがあいつだとわかっているのだけど少しも動くことができない。

人影のままあいつはいう。






お前は、


俺さ。






嫌だ。うそだ。嘘じゃないさ。お前は俺で、俺はお前。違う。違わない。
お前は俺じゃない、俺はお前じゃない。
うそだ。違う。同じだ。同じじゃない。嘘だ。俺は。俺が。
仲良くしようぜ、と差し伸べられた手のようなものは重油みたいにどろどろと何か黒いものでしかなくてぞわぞわと首のうしろのあたりがざわめく。
その手をどけようとしてみるがやっぱり力は少しも残っていなくてべったりとその黒いものは俺の手をつつんだ。

やめろ。はなせ。近づくな。気持ち悪い。寄るな。





そのまま腕をぐん、と引かれて俺は目を回した。

















気がつくと真っ白な部屋でつんとした消毒液のにおいでそこが保健室だと気づいた。まだあのどろどろがついているようで俺はやっぱり真っ白なシーツを跳ね除ける。
汚してしまってはいやしないかとおそるおそる掌をひらくとそこはただ少し汗ばんでいるだけでなにもなかった。
あいつは今まで俺にむかって話しかけたりすることなんてなかった。
俺はもしかするといよいよあいつに追いやられてしまうのかもしれない。
開いた手は血の巡りが悪くなっているのか冷たくて、ますます自分のもののように思えなかった。

しゃあ、とカーテンを開ける音に目をやると柳先輩がいた。先輩の向こうの窓は真っ赤に染まっていて、それがまるであの暗い部屋にいたときにみていたテレビの景色のようでおれは、恐ろしくなって叫んだ。


瞳をどんなにつよく瞑っても瞼の裏のカーマインは消えなかった。







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悪魔化する赤也の話
多重人格なんだけど根っこは同じだよ、みたいな話
赤目までは赤也と融合済みです。赤也<赤目<悪魔
みんな柳先輩がだいすきです。続きはかけたらかく。

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2007'07.04.Wed
転地療養でやってきた15歳の少年はおそろしく奇妙な容貌でほかの人間に対しては決して口を開かないのに私に対してだけは人懐こい不思議な子どもだった
ただそこにあるべくしてある、といったような風の顔で15にしてはもうずいぶんと世間に対して諦めていてそれがまたどうにも彼が彼である所以のようだった





ぜんまい仕掛け







芦屋の大きなお屋敷からフォードに乗りやってきた少年は恐ろしく色の白い子どもで、一度も陽の光を浴びたことがないのではないかと思った。世話係だろうか、いくつか少年よりも年嵩の少年、こちらは少年というよりももう青年の域に差し掛かっていて、


あとでつづきかく

とりあえず設定(たぶん年齢とか変わる)
大正~昭和頭、療養所は軽井沢、幸村、真田両家とも神奈川に本宅、鎌倉あたりに。切原家は商家だから横浜。
柳生(22):医者、もともとは御典医
仁王(15):真田の家の末子(籍を入れていないので仁王姓)
真田(22):現在の当主(父他界、腹違いの兄に家督を譲ろうとするが本妻でないために拒まれている、仁王を真田の家に入れた。)華族
真田(兄)(27):弦一郎の腹違いの兄
幸村(18):療養所に入っている、華族
丸井(15):幸村の家の乳母子、精市とは乳兄弟
ジャッカル(17):療養所での世話係
切原(13):療養所一帯の土地を所有している商家の末子、特需で成り上がった
柳(18):切原家おかかえの医者見習い、兼赤也の家庭教師
2007'07.04.Wed
金曜日の夜に、乗車券を2枚と小さな鞄ひとつで侑士はやってきた。今からちょっと出られるか、と聞かれ、俺はすぐにそれはいつものようにただしゃべるために近くの児童公園に誘う其れとは違うことにすぐに気づいてしまったので、ちょっと待って、とだけ言い置いて部屋へ戻り、部屋着からお気に入りの服に着替えて、簡単に身支度すると机の財布と携帯電話へ手を伸ばしたが、携帯電話はおいていくことにした。多分此れは必要ない。
慈郎に返信しそこねてしまっていて、ごめん、と携帯電話に向かってあやまって(意味がないことぐらいわかってはいるがかといってここでそのままにしておけるほど俺は嫌な奴じゃない)
玄関へと急いだ。
スニーカーもこの間の休みに買ったばかりの濃いピンクのハイカットをはいて行くことにした。侑士はその間中黙っていて、俺はそんな侑士の分もよくしゃべった。
母親にちょっと出てくる、とだけ言いおいて俺と侑士は家を出た。少し歩いて一度だけ家を振り返る。
「がくと、ええのん」
「いいよ」
侑士が俺の少し前で立ち止まる。ここで引き返したらどうなるか俺は考えて、それから侑士の手をとり、さっきまでの慈朗とのやりとりをおもしろおかしく話して聞かせた。

おどろくほど、侑士の手のひらはつめたかった。



週末の上野駅は混雑していて誰も俺たちに気がつかないみたいだった。
誰にも見えない俺たちは人と人との間をすり抜ける。俺にとっての道標は頭上の看板でもなくただ、つないだ侑士の冷たい手だけだった。いくつかの階段を上り下りして俺は感覚がおかしくなってきた、ここは地上か地下か。


侑士の持っていた乗車券は北斗星のもので、ベタだな、と俺は笑った。恋愛映画が好きな侑士のいかにもすぎる選択に俺はまた笑った。
  



かけおちの話
 
2007'05.11.Fri

人目を忍んでこんな夜更けに何ンかあったのか。
ぎりり、と強く歯を噛み締める。まさかこんなところで人に会うだなんて。
いくら避暑地になったといって成金どもが競うように別荘を建てはじめるようになったこの高原とて少し道を外れれば薄暗い森と肌寒い霧の立ちこめるぞっとするような暗闇が広がっている。
観月は後悔した、人がいないだろうと森へと足を運んだことに。辞めておけばよかった。

あとで続きかく

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昭和初期パロ
赤観

2007'05.03.Thu
きみはひかりかがやく空の星
そういう歌詞が一番にあうと思うのだけれど、と身体ばかりすくすくと育ったわりにおつむは2歩も3歩も遅れてるんじゃないかと(悪口じゃないよ、実際彼のテストの点数は散々だ)後輩がなんの衒いもなしに言う。俺に言わせてみれば、地を這うお前のほうがよっぽどうらやましいのだけれど。

そう?と笑顔で返してやれば、うんうん、と自分でも確かめるようにダビデは頷く。
本気でそう思っているのだから憎めない。いっそ悪女とかだったら、いいのにと何度も考えたのだけれど、やっぱりダビデはダビデでかわいい後輩だ。
ほら、あっちでバネがよんでる、早くいっておやりよ。

どこまでも無意識に良い男を演じようとする自分にうんざりしながら俺はのんびりコートに向かいながら歌う。

きみはひかりかがやく空の星
手を伸ばしても とどかない
ぼくは毎日屋根の上からジャンプして
とどかないきみに手をのばすんだ


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バネダビでバネ←サエさん
ダビデが良い子すぎて憎めないサエさん
一人で失恋レストランしてるときに包容力の男いっちゃんが現れてサエさんは落ちます^^
2007'05.01.Tue
二人はきっと前世は双子だったのじゃないかとふと石田は思った。
確かに性格だけなら二人は正反対だ。よくしゃべり、よく動き、くるくると表情の変わる神尾と。表情もあまり変えず口数が少なく、開いたかと思えばぼやいている伊武。しかし何かの拍子に彼らはふ、と同質の何かになってしまうのだ。
二人はそれぞれ誰かに恋をしているようだった。少し熱っぽい表情でぼんやりとしていることが最近多い気がする。
そんなとき普段なら二人は口げんかになってしまうのが常なのに、そっとコート脇のベンチで並んで座っている。会話をしているようだが甲高い神尾の声はしない。こっそりと声をひそめて、地面へ視線を落としながら小さく小さくやりとりをしている。
そうしてそっと二人は手を重ねているのだった。

石田は何か見てはいけないものを見たような気持ちになった。幼い子が宝物をそっと自分だけの隠し場所に埋めたところを見てしまったような。秘密めいたそれに気持ちが落ち着かなくなった。
がたん、とラケットを取り落としてしまって、二人はふ、とこちらへ目線をあげた。
ぱちん、とシャボン玉が割れたように二人の空気はいつもの通りに戻った。
何事もなかったかのようにコートに入り練習を始める二人に、やっぱり石田は二人はきっと双子だったに違いないと思った。


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橘伊武でベカミでふたりはプリキュアです。伊武神は百合。かわいこちゃん。
2007'05.01.Tue
ある日突然消えてしまった男がいる。
もともと存在感があれだけあるにもかかわらず、すっと気配を消せるまるで猫みたいな男だった。なんでそうやって周りとの関係を絶とうとするのかと一度聞いたことがあったようにおもう。
「居なくなってから気付いたら遅かった、ってことにせんためじゃあ」
そういってくすぐったそうに笑った男、仁王は、どこかへ消えてしまった。
コートにも校舎にも部室にもどこにも彼の気配は残っていない。
あれだけ部員と親しそうにしていたにもかかわらず誰にも気付かれることなく彼はそっと消えてしまった。

私は彼の気配がどこかに残っていやしないだろうかと毎日学校で、行き帰りの道で彼の名残を探す。
校舎の裏、部活帰りに飲み食いしていた小さな商店、彼と別れるいつもの橋のたもと。

彼は上手くやる男だ。誰にも気取られずに消えた。
ただ
私という半身だけは騙しきれなかったようだ。


彼は何処にも居ない、ただ私の記憶の中だけに今も住み続ける男がいる。
2007'04.22.Sun

信頼していないわけじゃないが、100%信用しているわけではない。そりゃあ俺が知らない過去の一つや二つもあるだろうが、それにいちいち口をだすほど聞き分けのない真似をしたいわけじゃない。
ただ、乾が数え続けたその4年といくらかの月日のうち、自分と過ごした日数はいくらだろうかと考えてみてばかばかしくなった。

昔のこと。と乾は笑って言う。その昔のことを4年間思い続けたというだけで俺はもう何にも勝てない。乾は冷たい男だ。切り捨てるときはあっさり捨てる。ペン先がすこし歪んでしまった万年筆をいとも簡単に捨ててしまおうとして勿体ないと言ったときに、使い心地が悪いじゃない、そんな面倒なの厭なんだよね煩わしい。と軽くいった彼に俺は何もいえなかった。
俺がその万年筆になる可能性だって十分にあるんだと、気が付いた。
さんざ甘い言葉で言うものだから忘れそうになっていた。

気分が悪い、試合をずっと見ていられなくて思わず眼をそらす。ぐるぐると身のうちを駆けめぐる黒いコレはひどく醜い俺そのもので

乾柳戦の海堂のはなし
つづきまたあとでかく

2007'04.20.Fri
それまで何かの仮面をかぶっていて、何かのはずみでカタンと音をたてて落ちた、その瞬間をみてしまった。

明るくてよく笑っていてそれでも周りによく気が付くのが千石清純という男だとそれまで思っていた。本当のところはまったくそういったわけではなかったが、すくなくともそれまではそれ以外の面を見せない男だったのだ。
すきだよ、と言ったその日だって彼はその仮面を外さなかったし、それから今日まですこしの油断もなく仮面をかぶりつづけていた。あんまり精巧にできた仮面っていうものは上手すぎてもう自分の顔なのか偽物なのかの区別だってつかない。それは本人ですら、多分。

最後の一球が本当にまるで映画みたいにスローモーションでネットへと吸い込まれていく。テニスボールが地面に落ちた瞬間に、そのはずみで彼の仮面も一緒に落ちてしまったようだった。
あれだけ肌にぴったりとはりついていた仮面は造作もなく転がり落ちて、まるでなかったかのようだったから千石自身きっとまだその仮面がはずれたことにだって気付いていないはずだ。
あんなに表情のゆたかだとおもっていた千石の無表情というのはおそろしさやそういったものよりも凄惨で、嵐のようにざっと音を立てて俺の心をとおりすぎていった。
彼のその瞬間をみてしまったのはどうやら俺だけらしく、みな試合に負けてしまったことで肩を落としていた。
俺だっていままでの3年間がこの瞬間おわってしまったということは頭のどこか冷静な部分がしっかりとその答えをだしていたが、同時に、今見てしまった説明のつかない現象については混乱するばかりだった。

実際は千石は数瞬の間だけ自失していただけですぐにまたもとの仮面を被りなおしてへにゃりと笑って壇にごめんねえとあやまりながら泣いている室町を宥めるといつもどおりの彼に戻ってしまっている。それをみてまた俺は混乱する。
彼がこちらに気付く。
「ごめんねえ南、せっかく南たちが繋いでくれたのに俺で駄目にしちゃって」
混乱している俺が何について混乱しているのかまだ彼は気付いていない。


2007'04.16.Mon
あの男を評価するにあたってどんなに考えた処で結局冷たいとしか言い様がないと思う。
そう云うと宍戸は不思議そうに首を傾げた。
「お前のことなんかこれでもかと甘やかしてる様にしか見えねェけどな」
確かに普段のやりとりをみていれば一瞬甘やかしたがりに見えるのかもしれない。普段だって声を荒げた俺に対して柔らかい口調に少し寄せた眉根なんかで堪忍なァなんて云うものだからやっぱり忍足は。としか見えないだろう。

しかしそれは俺からすれば幻視でしかない。
眸が何かの金属片の様にきろりとしていて少しも笑ったことなんてないじゃないか。長い前髪と眼鏡のせいで気付いていないだけなのだろうか。少なくとも、隣にいてその程度の事はわかる。
「あいつは」
とそこまで口を開いて忍足を評価する言葉を発しようと思ったが、結局宍戸からみた忍足は甘い男で、俺が知っているのは冷たい男で、それも結局違うのかもしれない。
口を噤んでしまった俺に宍戸はまた少し不思議そうにしていたが、元より細かいことは気にしない男だ。さっさと話題を切り替えてしまった。
それに適当に相づちを打ちながら考える。
忍足は甘やかしたがりな男を演じておいて一番甘やかしている俺に対して一番冷たい面を見せる。
一体何が目的なのだろうか、とそこまで考えた所で教室の扉に見慣れた影が映る。
「がっくん、部活行こ」
唇の端をにんまりとあげてこちらへ手を振る忍足に宍戸はやっぱり甘いだろあれ、と指をさす。
よく見てみろよ。
あの笑い顔、いつも同じじゃねェか。
薄気味悪い。
ちっとも笑ってなんかないくせに。
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