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ブラックアウト寸前

増え続ける細胞の音を聞いた気がしてあまりの生命力に思わず息を止めてみた

2024'05.05.Sun
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2007'12.11.Tue

ぶつん、と張り詰めた糸の束に断ち切り鋏を入れたような音が耳の後ろのあたりから聞こえたかと思うと目の前が真っ暗になる。
ああ、あいつが来る。
俺はもう少しだけでいいから冷静さを失わずに居たいとうずくまった身体の下敷きになった手に触れている砂をぎりぎりと握り締めた。あいつに明け渡してしまうのだけは嫌だ。
耳の奥で声がする。早く、どけよ。



嫌だ。嫌だ。こっちに来るなよ。そこは俺の。俺の。

嫌だ。


嫌だ。





嫌だ。

 






carmineの景色






気がつけばやっぱり俺はあいつに追いやられて、暗い部屋にいた。真っ暗な部屋にはソファがひとつとテレビがひとつ。テレビは何故かとても古くて、ダイヤルをひとつひとつ廻すキャラメルを少し焦がしたような色をしている。暗くてあまり様子はわからないけれど。テレビは砂嵐でざあざあと嫌な音ばかりする。部屋は狭いのか広いのかわからない。一度壁まで歩いてみようと思ったこともあったがどこまでが壁でどこからが闇なのか際限なく続いていたらこの場所に戻ってこれないんじゃないかと恐ろしくなってやめた。この部屋にきたら俺は何もできない。
ただソファに座ってテレビの画面を見つめる。俺があそこにいない間あいつが何をしているのか見張ってなければならないんだ。
畜生。そう呟きながら親指のつめを噛んだ。あいつも同じ癖があるから俺のつめはいつもぼろぼろだ。
砂嵐はいつのまにか鮮やかなカーマインに染まる。
カーマインの向こうにあいつが見ている世界が広がる。あいつの世界は気味が悪い。いっそ鮮やかで奇麗だと思えるほどの色彩のなかに黒く塗りつぶされた針金の塊のような人。建物だとかそういった他のものはまるで作り物のように輪郭だけが映るだけでちっとも何かわかりやしない。
壊れた万年筆で強引に描いたみたいな人はしゃべる。声を聞けばそれが誰なのかわかるがその声はひどく曖昧でほとんど聞き取れない。
あいつの見ている世界は異常だ。まるで異常。ただただ赤く、見つめていると気が狂うんじゃないかと思う。
あいつがいることに気づいたのは最近で、それに気がついたのは柳先輩だけだった。他の先輩はただ俺がいつもよりもっと凶暴になったと思い込んでる。あいつは人の言うことなんて少しも聞かない(それが幸村部長であってもだ!)けれど何故か柳先輩のことは少しだけ、聞く。柳先輩はあいつは俺である部分も少しあるらしいのでもしかすると俺が好きだと思ってるのと同じなのかもしれないといった。俺はあいつであるはずもないのだけど。あいつの見る景色の中で柳先輩だけはうっすらと輪郭をもっている。ぼんやりとしてそれはカーマインに滲んでいるがそれが誰なのかはわかる。
俺はあいつのことを憎んでいるといっていいくらい嫌いなのに柳先輩はそうでもないという。少し聞かん坊な所はあるがまあ可愛いものじゃないかとすらいう。俺には少しもそうは思えないのだけど。
テレビの画面は相変わらずカーマインの景色で気味が悪い。
はやくあいつの気が済んで俺を戻してくれればいい。ひとりきりでここにいるといつかここから出られなくなるんじゃないかとだんだんと恐ろしくなる。いつかあいつが俺をのっとって俺はずっとここに一人きりになるんじゃないか。
画面にうつる人のような黒い塊がぐちゃりとつぶれた。すごく嫌な音がする。何かが飛んできてカーマインはさらに鮮やかさを増した。俺は急に胃の奥を握りつぶされたみたいになって、こらえきれずに吐いた。
俺はこの色を知ってる。
吐いて吐いて、あとはただ嗚咽した。

やめてれくれよ。もう。俺が俺でなくなる。早く何処かにいけよ。
俺が俺でいられるうちに、俺の居場所がなくならないうちに。
俺が俺?俺がここにいる限りもうあそこにいる俺は俺じゃないのか。じゃあ俺はどこに行けばいい。俺は?
俺は何処に?
俺はもうここから出られないの?
やめろよ。何故で出てくるんだよ。早く何処かにいけよ。俺は。俺の。俺が。


テレビがから目を逸らしたいのに俺はただ金縛りにあったみたいになってしまって指ひとつ動かすことができない。ただソファでうずくまるようにして足を抱えたまま木偶みたいにテレビを見続ける。瞳が乾く。このまま虹彩までカーマインに染まるんじゃないかというほどただ凝視する。汗が背中を伝って気持ちが悪い。ああ。
あの色は嫌な色。
早く。早く。お願いだから。ああ。












ぱちん、と暗い部屋に灯りがつく。何処に扉があったのかわからないがようやく動くようになったが随分と油をさしていない機械がぎぎ、と音を立てるように鈍く首を回してそちらを見ると、そこには輪郭が真っ黒な人影がいた。テレビの残像のせいかカーマインがまだちらついて。俺は瞬きを繰り返した。
人影がこちらに近づいてくる。
俺はすっかり虚脱してしまっていて、それがあいつだとわかっているのだけど少しも動くことができない。

人影のままあいつはいう。






お前は、


俺さ。






嫌だ。うそだ。嘘じゃないさ。お前は俺で、俺はお前。違う。違わない。
お前は俺じゃない、俺はお前じゃない。
うそだ。違う。同じだ。同じじゃない。嘘だ。俺は。俺が。
仲良くしようぜ、と差し伸べられた手のようなものは重油みたいにどろどろと何か黒いものでしかなくてぞわぞわと首のうしろのあたりがざわめく。
その手をどけようとしてみるがやっぱり力は少しも残っていなくてべったりとその黒いものは俺の手をつつんだ。

やめろ。はなせ。近づくな。気持ち悪い。寄るな。





そのまま腕をぐん、と引かれて俺は目を回した。

















気がつくと真っ白な部屋でつんとした消毒液のにおいでそこが保健室だと気づいた。まだあのどろどろがついているようで俺はやっぱり真っ白なシーツを跳ね除ける。
汚してしまってはいやしないかとおそるおそる掌をひらくとそこはただ少し汗ばんでいるだけでなにもなかった。
あいつは今まで俺にむかって話しかけたりすることなんてなかった。
俺はもしかするといよいよあいつに追いやられてしまうのかもしれない。
開いた手は血の巡りが悪くなっているのか冷たくて、ますます自分のもののように思えなかった。

しゃあ、とカーテンを開ける音に目をやると柳先輩がいた。先輩の向こうの窓は真っ赤に染まっていて、それがまるであの暗い部屋にいたときにみていたテレビの景色のようでおれは、恐ろしくなって叫んだ。


瞳をどんなにつよく瞑っても瞼の裏のカーマインは消えなかった。







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悪魔化する赤也の話
多重人格なんだけど根っこは同じだよ、みたいな話
赤目までは赤也と融合済みです。赤也<赤目<悪魔
みんな柳先輩がだいすきです。続きはかけたらかく。

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2007'07.04.Wed
転地療養でやってきた15歳の少年はおそろしく奇妙な容貌でほかの人間に対しては決して口を開かないのに私に対してだけは人懐こい不思議な子どもだった
ただそこにあるべくしてある、といったような風の顔で15にしてはもうずいぶんと世間に対して諦めていてそれがまたどうにも彼が彼である所以のようだった





ぜんまい仕掛け







芦屋の大きなお屋敷からフォードに乗りやってきた少年は恐ろしく色の白い子どもで、一度も陽の光を浴びたことがないのではないかと思った。世話係だろうか、いくつか少年よりも年嵩の少年、こちらは少年というよりももう青年の域に差し掛かっていて、


あとでつづきかく

とりあえず設定(たぶん年齢とか変わる)
大正~昭和頭、療養所は軽井沢、幸村、真田両家とも神奈川に本宅、鎌倉あたりに。切原家は商家だから横浜。
柳生(22):医者、もともとは御典医
仁王(15):真田の家の末子(籍を入れていないので仁王姓)
真田(22):現在の当主(父他界、腹違いの兄に家督を譲ろうとするが本妻でないために拒まれている、仁王を真田の家に入れた。)華族
真田(兄)(27):弦一郎の腹違いの兄
幸村(18):療養所に入っている、華族
丸井(15):幸村の家の乳母子、精市とは乳兄弟
ジャッカル(17):療養所での世話係
切原(13):療養所一帯の土地を所有している商家の末子、特需で成り上がった
柳(18):切原家おかかえの医者見習い、兼赤也の家庭教師
2007'05.01.Tue
ある日突然消えてしまった男がいる。
もともと存在感があれだけあるにもかかわらず、すっと気配を消せるまるで猫みたいな男だった。なんでそうやって周りとの関係を絶とうとするのかと一度聞いたことがあったようにおもう。
「居なくなってから気付いたら遅かった、ってことにせんためじゃあ」
そういってくすぐったそうに笑った男、仁王は、どこかへ消えてしまった。
コートにも校舎にも部室にもどこにも彼の気配は残っていない。
あれだけ部員と親しそうにしていたにもかかわらず誰にも気付かれることなく彼はそっと消えてしまった。

私は彼の気配がどこかに残っていやしないだろうかと毎日学校で、行き帰りの道で彼の名残を探す。
校舎の裏、部活帰りに飲み食いしていた小さな商店、彼と別れるいつもの橋のたもと。

彼は上手くやる男だ。誰にも気取られずに消えた。
ただ
私という半身だけは騙しきれなかったようだ。


彼は何処にも居ない、ただ私の記憶の中だけに今も住み続ける男がいる。
2007'04.15.Sun
存在自体が何かの歪みでできたような男は外見とは裏腹に人懐こい男を演じていて、だから質が悪い。
すぐに喧嘩に巻き込まれる。その癖、反撃もしないでへらへらと笑っているからまた殴られる。
だから苛々として少し早口に小言を言った。なんでそう巻き込まれっぱなしになるんですか、毎度のように間に入るこちらの身にもなりなさい。
「面倒なだけじゃ」
「ならまずその奇抜な格好をどうにかしたらもっと面倒が減るんじゃないですか」
「嫌じゃア、これは譲れん」
色の抜けきった(私からすれば長すぎる)前髪の間で斜視気味の眸を少しだけバラバラにきろりと動かしてこちらの様子を伺う。それをみてまた私は苛々とする。
「沁みる」
「当たり前でしょう」
唇の端が切れて少し血が滲んでいたので軽く消毒液を吹きかけてやった。
べろりとそこを舐めて、今度は苦いと仁王が言う。
「舐めなければいいでしょう」
「だってぇ」

苛々する。
自己否定が大好きなこの男が自分に何を求めているか分かり切っているので余計に苛々する。
自虐的なくせに甘えたがりで嫉妬深い面倒でしかない男に対して結局苛立ちながらも構っている自分自身にも苛々する。

話すだけ無駄だとばかりに黙って消毒液をしまうと早々に制服からユニフォームに着替えてラケットを手に取った。
「やあぎゅう」
甘ったるい声で後ろから声が掛かる。
無視して部室を後にしようとするとまた言葉が後ろから掛かる。
「キスして」
「嫌です」
「なして」
「する意味がありますか」
「ある」
「どこに」
「してくれんと死ぬ」
「誰が」
「まさはるくんが」



首根っこを掴むようにしてロッカーに強く押しつけると、仁王はまるでそうすることが初めから分かっていたように目を猫のように細めて口を開ける。
噛みつくようにそこへ口づけ、苛立ち紛れに先程できたばかりの傷口に思い切り歯を立ててやった。
びくりとその一瞬だけ肩に力が入るのが感じ取れた。しかしそれはすぐに弛緩して細い指の先が少しだけユニフォームの裾を掴む。
乱暴に舌を差し込み唾液を混ぜ返し、歯列をなぞる。うく、と喉の奥で少しだけ呻いたのを聞いて少しだけ憂さが晴れたので離してやった。

肩で息をしながら仁王はふふ、と笑った。
「やっぱり俺の彼氏はええ男じゃア」

一発殴ってやろうかとすら思ったが表から声がしたので拳の力を抜いた。
「早く支度なさい、皆がきます」
「はあい」
いそいそと支度を始める仁王を視界の端に捕らえながら柳生は部室へ入ってきた赤也と丸井と何気ない会話をしながら大概歪んでるのは自分かと、何度目になるか分からない自問をして柳生は結局今日も仁王とコートに立つ。


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